【「除」発言ではない】
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「狡兎死して良狗烹らる」(こうとししてりょうくにらる)という古い諺がある。
手強い敵(=狡兎)がいなくなると、敵を倒した有能な臣(=良狗)は用済みとされ、処分される…という例えである。

さて今回、希望の党が惨敗したのは、党首である小池百合子氏が民進党議員を受け入れる際に「排除」といった乱暴な言葉を使って、それが国民の気持ちを冷めさせ、立憲民主党という新しい受け皿へ流れた…というのをマスコミは喧伝したがり、希望の党の落選者もサッサと小池氏の責任に集約したいらしく、それに乗っかって同じ事を言いたがるが、それは違うと考えている。

もちろん総選挙の敗北は小池氏の責任で間違いはないのだが、自分が思うに、希望の党が惨敗した理由は件の「排除」発言ではなく、自分が10月16日の日記でも触れたように、自らの党を「保守」と口走ったり、「自民党との連立を匂わせる」発言をした事にあると考えている。

そもそも、小池氏が乱暴な言葉を使うのは、別に衆院選の時に始まった事ではない。
小池氏は都知事になった直後に、都議会・自民党のベテラン都議達を「頭の黒いネズミ」と罵っていたが、この人を害獣呼ばわりしたかのような言葉については、何ら問題にならなかった。
むしろ、これまで東京都をいいように食い荒らしてきた老獪なネズミ議員に怒りを覚えていた都民、ひいては国民にとっては、“小気味いい言葉”ですらあった。

小池氏はまさに、狡兎(※ここではネズミ)を始末するための頼もしい良狗だったワケである。

はどこだ?】
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ところが、戦いの舞台が都議会でなく「衆院選」に移った事で、その状況が一変する。
それは小池氏が行った選挙戦(前哨戦)における、先述の「保守」や「自民党との連立を匂わせる」発言である。
小池氏が「自民党との連立」を匂わせた時点で、希望の党が“討つべき敵”(=狡兎)がいなくなったのである。
もちろん、敵である自民党(=狡兎)が消滅したという意味ではなく、敵でなくなったという意味での“いなくなった”という話である。

小池氏も、それが恐ろしいまでに「致命的な悪手」だった事に気づいたのだろう、終盤の選挙演説では“一党独裁との決別”や“加計・森友問題の徹底追及”など、再び自民党を敵の認識し直し、必死の自民党口撃を展開したが既に後の祭り、今回の惨敗へとつながったのだ。

もし、小池氏が「自民党との連立」など一切許さずに、中道リベラル路線と自民党批判を一貫して続けていれば、“排除”発言も“ネズミ”同様スルーされ、選挙結果も非常に良いものだっただろう。

そもそも民進党は、左派の共産党と組もうという勢力がいたワケだから、そういう勢力を“排除”して、希望の党の政策に合う議員を選別して入れるという小池氏のやり方は、間違ってなかった。

国民に「自民党の補完勢力」と思われてしまった事が、希望の党の運命を決定づけ、その引き金となったのが、小池氏の風見鶏的な“方針の揺らぎ”にあったのだ。

したがって、希望の党・小池百合子が支持を失った「本当のキッカケ」は、“徹頭徹尾、自民党と対峙できなかった事”であり、“排除発言がフツフツ後から槍玉に上がって支持を失った”というのは「処分されている工程」(烹らる)に過ぎないのである。



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