2007年5月27日の記事です。

高額賞金をかけたゲーム大会は、
日本でも出来る

 ずっと疑問に思っていて、また当HPの性質上、TV製作会社や出版社、イベント会社から問い合わせがあった疑問。それが「ゲーム大会に高額賞金をかけても問題ないのか?」という疑問だった。

 「賭博に関する法」を中心に、自分でも色々調べてみたが、なかなか判明せず、また一方で各所の様々な意見を総合してみたが、「最初からダメだ」というものや、「額が小さければいい」というものや、「『闘劇』(格ゲー大会)の賞金は、法的に出せるギリギリの線」など、真偽も分からない情報がいっぱい出て、それらは余計自分を混乱させるものでしかなかった。

 実際ある大手ゲームメーカーの役員も「賞金をかけたゲーム大会をプロデュースしたいんだけど、法律がね・・・」と話していたり、推測や所感でしかすぎないにせよ、自分もまた、やっぱり高額賞金をかけたゲーム大会は日本では許されていないのでは・・・、と思っていた。

 さてそんな折、当HPの読者の方の一人に、弁護士の先生とお知り合いの方がいて、先日(といっても、だいぶん前になってしまったが)その法的見解を提供していただいた。

 それが「高額賞金をかけたゲーム大会も開催可能」という結論だ。

 正確には、ゴルフトーナメントや将棋の竜王戦など、他のスポーツや競技と同様の方式で行うのであれば、「ゲーム大会に賞金をかける事自体、何ら問題にされるべきでない」ということだ。
 むしろ、ゴルフや将棋で可能で、なぜゲームがいけないのか? ということで、確かに考えてみればそうだな、と首肯できる。

 だから結論からいえば、優勝賞金が100万でも、アメリカのように数千万でも、ゲーム大会に賞金がかけられるのである。


賞金をかけたゲーム大会、どうやって行う?

 さて、ではどうやって賞金をかけて大会をするか、概観してみよう。

 もちろんその方法は、ゴルフ大会など、他のスポーツと同じ方法で行われる。
 どの大会でも同じことだが、まず「大会運営者」がいて、「選手」は「大会運営者」に対し、彼らの設置した会場や競技場の使用料を支払ってプレーする。

 そこで「選手」が優勝したり、上位入賞を果たしたりすると、「賞金」が発生し、「選手」に支払われる。

 早い話が、それだけである。

 ただし一つ注意しなければならないのは、“その「賞金」を、「大会運営者」が出してはならない”ということだ。
 もし「大会運営者」が賞金を支払うとすると、「大会運営者」が会場を“開帳”し、「選手」(博徒)からカネを巻き上げ、勝った者にそれを還元する、という 「賭博」 が成立してしまうからである。もちろんこれは違法である。

 なので各種大会は、「大会運営者」と「賞金を支払う者」 を別にしていて、「賞金を支払う者」がいわゆる“スポンサー”ということになる。これなら「賭博」が成立しないので合法というわけなのだ。「サントリーオープン ゴルフトーナメント」や、「キリンカップ」(サッカー)など、様々な“冠大会”があるが、これらは全てこういった事情が絡んでいるのである。

 ゲームもまた、同じ方法で行われる限り、問題ないのである。


では、ゲーセンでは開催可能か?

 しかし、ゲームの賞金つき大会を開く場合においてなのだが、さらにもう一つ、注意すべきことがある。

 それは「ゲームセンター内で開くことは、許されない」ということだ。
 もちろん、毎週全国のゲーセンで行われている“従来どおりの大会”については問題ない。
 だが、賞金をかける大会ともなると、それは不可能だ。

 というのは、ゲームセンターは「風俗営業法」という、賭博法とは別の法律で縛られていて、風営法の方に引っ掛かるためである。だからやるなら、『闘劇』のように、ゲームセンター以外のスペースを用意して、そこでやるしかない。

 しかし“抜け道くさい”話で申し訳ないのだが、ゲーセンでも賞金をかけた大会を行う方法が一つだけある。

 それは、「床面積に対して筐体数がある一定以下の数しかないゲームセンターで行う」というものである。
 これらは法律上「ゲームセンターとは認識されていない」ので、風営法適用外となるのである。
 たまに見かける「24時間営業のゲーセン」などは、まさにこういった類の店である。恐らくは表面上は、カラオケ屋かビリヤード場などということになっているはずだ。

 だからどうしてもゲーセンでやりたければ、そういった類の店を探すことをお勧めするが、どのみち会場を借りれば済む話なので、無理にゲーセンにこだわる必要もないだろう。

 また法律とは別に、ゲーセンで賞金つき大会が開かれるのは、教育上あまり感心しない部分もある。

 子どもがゲームでカネを稼ぐことしか考えられなくなり、成長期に受けるべき教育を始め、その他の嗜好や興味を見失ってしまうのなら、やはりそれは損失といわざるを得ない。
 子どもが学校をサボって大会に行き(あるいは大会で賞金を獲得するための練習に行き)、ゲームセンターがそういった子どもの溜まり場となったとしたら、それはそれでいかがなものだろう。

 だから賞金付き大会が日本で行えることが判明した以上、それに出られるのは○○歳以上、といったガイドラインを早々に策定すべきだと考えている。


もっとゲームは胸を張れ

 最後に、一連のこの問題について現状を分析してくださった弁護士の先生によると、

 「賞金付き大会を開催しようとして実際に咎められたという例は無いのでは? 裏付けが無いから誰も一歩目を踏み出さないだけでは?」

 という見解だった。
 そして、

 「ゴルフやモータースポーツで出来るのにゲームでは違法ということは絶対に無い」

 という心強い一言も頂いた。

 そして自分もまた思う。ゲームが社会悪のように捉えられていた時期が長かったため、ゲーマーやゲームメーカーサイドもどこか“及び腰”になっているところがあるのではないか、と。

 我々はそろそろ「新たな一歩」を踏み出してもよいのではないか。



 ゲームと賞金の関係を公正に判断して下さった弁護士の先生、
 なお、この情報を提供していただいた「村角」様、
 本当にありがとうございました。