2006年4月4日の記事です。

【ついに出た、年収1億円のプロゲーマー!】

 もう1年以上も前の2005年1月末、「第8回:海外のプロゲーマーについて」という話題を取り扱った。

 当時の記事では2000万円を稼ぐ韓国のプロゲーマー、”皇帝”ことイム・ヨハン氏の紹介をしたが、何と今回はその5倍、年収1億円を稼ぐプロゲーマーを紹介せねばならない。

 年収1億円プロゲーマーは、”Fatal1ty”(ハンドルネーム)こと「ジョナサン・ウェンデル」氏(06年当時、24歳・アメリカ)である。ウェンデル氏は18歳でプロゲーマーとなってからというもの、快進撃を続け、これまでに40回の優勝に輝いているプロゲーマーの中のプロゲーマーである。

 彼は(というかプロゲーマーは)プロゴルファーのように世界をツアーで回り、トーナメントの賞金を稼ぐスタイルだ。日本以外の世界には高額な賞金が出る大会が多くあり、賞金総額は1000万~1億円にものぼるという。

 ウェンデル氏はこれら大会に勝ちまくり、昨年は2700万円を稼いでいる。

 では、なぜ年収が1億円になるのかといえば、スポンサーとの契約料に加え、「マウス」など、自らがデザインしたオリジナルブランド商品(PC関連品)を手掛けていて、そのロイヤリティー収入が6000万以上あるのである。そしてこれらの合計によって、年収1億円に到達しているのである。

 さて今年(06年)もすでに、ニューヨークでの大会で優勝を手にしていて、賞金1700万円を獲得している。

 今年も1億稼ぐのだろうか。

 さて、「デジタルARENA」によると、韓国でも1億円プレイヤーが生まれているようである。記事によると、「プロゲーマーは、企業スポンサーのもとでチームを作って大会に出場。給料と大会での賞金を収入源とする。トップクラスのプロゲーマーともなると、その年収は10億ウォン(約1億円)を超える。野球やサッカーの選手より人気のゲーマーもいて、子どもたちに将来の夢を聞くと、必ず上位にプロゲーマーの名が挙がる」という。

 ところでなぜ韓国がここまでプロゲーマー化が進んだかであるが、これはひとえに「PC普及率」に尽きるだろう。財団法人の韓国インターネット振興院が、韓国内でのインターネット利用動向を調べた「05年上半期・情報化実態調査」によると、インターネットの利用率は「71.9%」にものぼる(「PC WEB」)。同時期の日本が「60%」ちょうどくらいなので、その高さがうかがえる。

 「韓国の街を歩くと、あちこちで見かける「PC房(バンと読む)」。韓国版ネットカフェであるPC房は、オンラインゲームを楽しむ子どもや学生達で常ににぎわう。家庭用ゲーム機が普及していない韓国ならではの現象だ。PC房ごとに、プレイできるゲームが決まっており、遊びたいゲームに合わせて店を選ぶ。1時間1000ウォンほどで遊び放題だ・・・(中略)・・・PC房以外にも、ネット利用を支えるインフラとしてあちらこちらでパソコンを目にする。ショッピングモールや駅構内などにある、企業のプロモーション用スペースから、郵便局や区役所、公民館といった公共のスペースまで、人の集まる場所には必ずといっていいほど、無料のパソコンが設置されている」(「デジタルARENA」)のだという。

 こういった下地がプロゲーマー化の強力な「追い風」となっていることは間違いない。現在世界的に、プロゲーマーはほとんどが「PCオンラインゲーム」のプレイヤーで、アーケードはごくわずか(いるらしい)、家庭用ゲームにいたっては、ほぼ皆無である。このように韓国の場合、PCゲームがその他プラットフォームのゲームやアーケードゲームをはるかに凌ぐのである。

 海外ではここ1年でプロゲーマーの年収最高額は5倍になったが、さて、我が国はというと、年収額どころか、プロゲーマー自体がほとんどいない(SIGUMA氏くらい)状態が相変わらず続き、まるで変わっていない。


【韓国ではプロゲーマーは、”ジャニーズ”】

 さてせっかくなので、韓国のプロゲーマーは社会的にどんな扱いなのか、見てみよう。

 「プロゲーマー」は先述の通り、子供たちの憧れる職業の上位(最近では1位に!)にランクされ、きちんとした年収があるため、社会的地位も保証されている(このあたりは前回記事「第8回:海外のプロゲーマーについて」をご参照いただきたい)。

 だから、韓国国民のプロゲーマーへのイメージは「プロスポーツ選手」であり、はたまた「アイドル」でもある。

 つい最近、「ARTIFACT@ハテナ系」というサイトを見つけたが、ここでは「プロゲーマー」たちがアイドルのように雑誌に紹介されているものが画像付きで見ることができる(グラビアばかりでゲームの画面がほぼゼロ、というのはいかがなものかと思ったが・・・)。

 まるで”ジャニーズ”のようである。実際、プロゲーマーにかけられる”黄色い声援”は小中学生ではなく、女子高生のものだというし、さらに子供がプロゲーマーになりたい理由もそれが「芸能人」のように見えるためで、ゲームの道を極めるストイックな姿を想像しているわけではない。また、「一番人気は最強のプレイヤーではなく、ベスト20にはなんとか入っているぐらいの”イケメン”」(「ARTIFACT@ハテナ系」)だという。

 まあここまでくるとちょっと・・・という気もしないではないが、もちろんそれだけ競争も激化するわけで、まるで下手だとベスト20にさえ残れないから、むしろいい傾向といえなくもない。

 ともあれ、日本で上手いゲーマーといえば、「高橋名人」や、メガネをかけた垢抜けないファッションのオタクを想像しがちなので、そのイメージは「真逆」である。


【プロゲーマーの兵役免除は「時期尚早」】

 今年の1月、韓国国防省が「e‐スポーツ」(プロゲーマーの競技)関連分野で選手として活動しているプロゲーマーに、「兵役免除」させる法案の検討を始めたというニュースが流れた。

 これに対し、世論は「時期尚早」という反応を示している。理由は、他の世界に通用するプロスポーツ選手が確定的に兵役免除となるわけではないから、プロゲーマーのみを免除の対象とするのはまだ早い、というものである。

 しかし自分は、この反応を見てむしろプロゲーマーの社会的地位の高さを実感することとなった。

 この”反対意見”は、裏を返せば「他のプロスポーツ選手に確定的な兵役免除規定があれば、プロゲーマーにも免除規定があってよい」ということである。つまり、プロゲーマーと、野球やサッカー選手の間に何ら”身分的格差”がないのである。

 一方、「兵役関連の国家政策を執行している国防省を含めた兵務庁などは、その間、関係省庁とeスポーツ兵役免除に関する事案に対して、論ずる用意はあるが長期的な思案として検討するという立場を表明」(「ジーパラ・ドットコム」)しているため、場合によれば今後免除の方に傾く可能性もある。


【このまま海外との”差”が広がってしまうのか】

 さて、ここ1年の米韓のプロゲーマー事情をみてきたが、プロゲーマーが完全なる独立した職業となっていることを如実に感じずにはいられない。自分にとっては、羨ましいを通り過ぎて、我が国が本当にこのレベルに追いつけるのかという不安ばかり先行してしまう。

 我が国でプロゲーマー1本で生きていくには、そのための「インフラ」が必要となってくる。それがないうちは不可能だ。

 今すぐプロ活動をしようにも、国内リーグもなければプロゲーマー協会もない。ゲームの国内大会くらいなら、PCやアーケードの分野でそこそこあるが、おそらくここで優勝しても最高でも3万円もらって終わりである。「年収3万」ではどうにもならない。

 ちなみに自分を「プロゲーマー」にあてはめると、2004年度のゲームによる年収が「13万円」、2005年度が「8000円」だった。一番売れない吉本芸人並みである。今年度はさすがにこういうことはないが、それでもゲームだけで1年越すことはほぼ不可能な見通しである。

 結局どんなにゲームが上手かろうと、収入がないので、どんどん辞めていくこととなる。自分の周囲ではもう3桁もの有能なゲーマーが消えていった。これは将来プロ化を図るなら由々しき事態だ。

 以上のように、問題は山積である。

 次回の「プロゲーマー化構想②」では、こういった現状や、今後我が国のプロ化がどうあるべきかなど、もっと具体的に考えてみる予定である。