※2012年4月13日の日記です。

「日本てんかん協会」が入っている都内のビル。
(クリックで拡大)
12日に起きた「京都・祇園暴走死傷事件」だが、容疑者が“てんかん”の持病があったことから、社会の“てんかん”に対する注目度が非常に上がっている。
そんな中、“日本てんかん協会”が事故の数日前、法務大臣へ「刑法および運転免許制度に関する要望書」を提出していたことが分かり、物議を醸している。
偶然のタイミングとはいえ、これによって特にネット上では“日本てんかん協会”に非難の声が集中、協会のサイトにもほとんどつながらない状態が続いている。
さて、このような状況において、自分は「ネットの情報だけで、この件を理解した気になるのはどうか」(※まあここもネットなんですが…!)と思い、意を決し、実際に“日本てんかん協会”電話することにした。
もちろん「取材です」と言うと100%断られるに決まっているので、NHK張りの“特殊な交渉術”を用い、それについては極秘事項のためお見せすることは出来ないが、今回も電話取材することに成功!
以下は、その取材内容である。
【1:今回の事件の反響について】
自分:「今回の京都・祇園の死傷事故で協会にはマスコミ取材が殺到していますか?」
協会:「本部の方は朝から電話が鳴りっぱなしで、マスコミの電話が殺到して、取材申し込みもかなり来ているようです」
やはりネットだけでなく、リアルの世界でも協会への反響は大きかったようだ…。
ただ自分は協会本部にかけたはずなのだが、受け手が“東京支部の事務局”と名乗るのに若干違和感を覚えたが、かくいう管理人も本社と○○事業所とが建物や部屋どころか、“パーテーションなる地形”(その距離、僅か8センチ)によって離れているだけの事業所側で勤務した経験があるので、そこは気にしないで取材を進めた。
…実際にこの“事務局”も複数回かけてやっと電話がつながっているので、マスコミ・一般からの問い合わせが殺到しているのは間違いない。
いずれにせよ、来ている取材申し込みについては「どう対応するかはまだ分からない」とのことだった。
【2:今後、協会の発表はあるか】
自分:「今回の件で、今後協会が公式に何か発表するということはありますか?」
協会:「反響がかなり大きいので、何らかの形で発表することになると思います。だだ、ある程度経過を見極めてからになると思いますが…」
しかし、その数時間後に協会の公式HP(サーバ負荷の関係か、1ページのみに変更)に「声明」が!
「事件の運転手が免許更新時に“てんかん”の申告をしていなかった」事実を述べ、「今回の事故で法律を守っている“てんかん”の運転者に対する社会の偏見が助長されないことを願う」というものだった。
【3:“てんかん”患者は車に乗るべきでないか】
自分:「他の“てんかん”患者の運転をやめさせる必要は?」
協会:「あくまで“てんかん”で車の免許を取れる人は、発作が5年起こっていなく、今後も無いと医師が診断した人に限られます。そうでない人には免許が出ないという運用基準になっています」
どうやら現在施行されている「道路交通法施行令」の話のようだ。
【4:法規制でこのような事故が無くなるか】
自分:「協会としても“てんかん”患者の運転をやめさせる必要は無いと?」
協会:「それだと医師に運転を認められた人まで一律に免許を取り上げられるという事態になるうえ、もっとひどいのは“てんかんである事実を隠して免許を取る人が増えてしまう”という問題があります」
何となく明瞭性に乏しかったので、改めて協会の見解を問うたところ「反対」の姿勢とともに、もし更なる法規制をしても、「逆に隠れて免許を取る人が増えるというモラルハザードを引き起こす」ことについても言及するという、踏み込んだ内容になって返ってきた。
今、テレビなどマスコミでも規制強化についての話が少しづつ出ているが、規制したからといって事故がなくなるというような簡単な問題でもなく、「場合によればもっと悪質化するという新たな問題」が浮き彫りとなってしまう結果となったのである…!
…以上、ニュートラルな立場を保ちつつ、今回の件について聞いてみた。
なお同様の理由から「今回の件について感想を」といった質問は排除した。
こういうのは電話を取った個人の感情が反映されがちなので正確性に欠けるため、あくまで協会が共通認識として持っているであろうという答えを引き出すための質問に終始した。
さて、TVなどマスコミも当初は“てんかん”による事故と思われていたが、13日夕方現在においては、犯人の暴走時に意識があった可能性を報じている。
つまり、暴走時に“てんかん”の発作が起きていなかった可能性についても報道し始め、すでに今日あたりから“事故”ではなく“事件”と名称の変更が行われたようだ。
ということで、現在まだ全容解明が出来ていない事件であるので、今後も慎重に見ていかないといけない問題なのだろう。
なお、オマケとして、“てんかん”の基礎的知識についてもいくつか聞いたので、以下に紹介しておきたい。
【5:“てんかん”は遺伝するのか】
自分:「やっぱり遺伝との相関性は大きい?」
協会:「いえ、遺伝というのは全く無いです。それもまた世間から大きく誤解されているんですが…」
実は親戚に“てんかん”患者がいて、取材では最初にこの話から振ったのであるが、正直、これは親族でありながら誤解していた。
電話口では「そういうのがもう少し分かってもらえれば、今みたいに“てんかん”である事実を隠して生きていかなくても済むのに…」と悔しさをにじませていた。
【6:我々は今後“てんかん”にはならないのか】
自分:「“てんかん”は生まれつきのもので、そうでない人は大丈夫でしょうか?」
協会:「いえいえ、そんなことはないです。生まれつきのものではなく、最近では高齢者になってからの“てんかん”患者も多いので…」
今、“てんかん”ではないから一生大丈夫という話ではなかった。
ある日突然“てんかん”になる可能性もあり、それは明日かもしれないのだ。
結局のところ、我々の多くはまだ“てんかん”を知らないのかもしれない。
自分も実際この取材を実施する直前に「突然意識を失い、痙攣を伴うこともある」という症状の知識を簡単に見ただけに過ぎなかった。
そして知識だけでなく、“考えるスタンス”も考えないといけないと思った。
つまり、あくまで自分は“てんかん”にならないという路線でこの問題を考えるのではなく「そうなった場合のことを考えつつこの問題を考えた方がより責任ある正確な判断が出来る」のかもしれない…ということだ。
すでに「日本人の1%は“てんかん”患者」であり、それは決して少なくない数なのだ。
≪関連記事≫
▼ 社団法人 日本てんかん協会・公式サイト(縮小版)
▼ 日本てんかん協会が法務大臣に「刑法および運転免許制度に関する要望書」を提出

「日本てんかん協会」が入っている都内のビル。
(クリックで拡大)
12日に起きた「京都・祇園暴走死傷事件」だが、容疑者が“てんかん”の持病があったことから、社会の“てんかん”に対する注目度が非常に上がっている。
そんな中、“日本てんかん協会”が事故の数日前、法務大臣へ「刑法および運転免許制度に関する要望書」を提出していたことが分かり、物議を醸している。
偶然のタイミングとはいえ、これによって特にネット上では“日本てんかん協会”に非難の声が集中、協会のサイトにもほとんどつながらない状態が続いている。
さて、このような状況において、自分は「ネットの情報だけで、この件を理解した気になるのはどうか」(※まあここもネットなんですが…!)と思い、意を決し、実際に“日本てんかん協会”電話することにした。
もちろん「取材です」と言うと100%断られるに決まっているので、NHK張りの“特殊な交渉術”を用い、それについては極秘事項のためお見せすることは出来ないが、今回も電話取材することに成功!
以下は、その取材内容である。
※ちなみに“前回”は3年前で、
逮捕直前だった木嶋佳苗被告を
TVが実名報道しなかった理由
についての電話取材だった。
逮捕直前だった木嶋佳苗被告を
TVが実名報道しなかった理由
についての電話取材だった。
∞・∞・∞・∞・∞
【1:今回の事件の反響について】
自分:「今回の京都・祇園の死傷事故で協会にはマスコミ取材が殺到していますか?」
協会:「本部の方は朝から電話が鳴りっぱなしで、マスコミの電話が殺到して、取材申し込みもかなり来ているようです」
やはりネットだけでなく、リアルの世界でも協会への反響は大きかったようだ…。
ただ自分は協会本部にかけたはずなのだが、受け手が“東京支部の事務局”と名乗るのに若干違和感を覚えたが、かくいう管理人も本社と○○事業所とが建物や部屋どころか、“パーテーションなる地形”(その距離、僅か8センチ)によって離れているだけの事業所側で勤務した経験があるので、そこは気にしないで取材を進めた。
…実際にこの“事務局”も複数回かけてやっと電話がつながっているので、マスコミ・一般からの問い合わせが殺到しているのは間違いない。
いずれにせよ、来ている取材申し込みについては「どう対応するかはまだ分からない」とのことだった。
【2:今後、協会の発表はあるか】
自分:「今回の件で、今後協会が公式に何か発表するということはありますか?」
協会:「反響がかなり大きいので、何らかの形で発表することになると思います。だだ、ある程度経過を見極めてからになると思いますが…」
しかし、その数時間後に協会の公式HP(サーバ負荷の関係か、1ページのみに変更)に「声明」が!
「事件の運転手が免許更新時に“てんかん”の申告をしていなかった」事実を述べ、「今回の事故で法律を守っている“てんかん”の運転者に対する社会の偏見が助長されないことを願う」というものだった。
【3:“てんかん”患者は車に乗るべきでないか】
自分:「他の“てんかん”患者の運転をやめさせる必要は?」
協会:「あくまで“てんかん”で車の免許を取れる人は、発作が5年起こっていなく、今後も無いと医師が診断した人に限られます。そうでない人には免許が出ないという運用基準になっています」
どうやら現在施行されている「道路交通法施行令」の話のようだ。
【4:法規制でこのような事故が無くなるか】
自分:「協会としても“てんかん”患者の運転をやめさせる必要は無いと?」
協会:「それだと医師に運転を認められた人まで一律に免許を取り上げられるという事態になるうえ、もっとひどいのは“てんかんである事実を隠して免許を取る人が増えてしまう”という問題があります」
何となく明瞭性に乏しかったので、改めて協会の見解を問うたところ「反対」の姿勢とともに、もし更なる法規制をしても、「逆に隠れて免許を取る人が増えるというモラルハザードを引き起こす」ことについても言及するという、踏み込んだ内容になって返ってきた。
今、テレビなどマスコミでも規制強化についての話が少しづつ出ているが、規制したからといって事故がなくなるというような簡単な問題でもなく、「場合によればもっと悪質化するという新たな問題」が浮き彫りとなってしまう結果となったのである…!
∞・∞・∞・∞・∞
…以上、ニュートラルな立場を保ちつつ、今回の件について聞いてみた。
なお同様の理由から「今回の件について感想を」といった質問は排除した。
こういうのは電話を取った個人の感情が反映されがちなので正確性に欠けるため、あくまで協会が共通認識として持っているであろうという答えを引き出すための質問に終始した。
さて、TVなどマスコミも当初は“てんかん”による事故と思われていたが、13日夕方現在においては、犯人の暴走時に意識があった可能性を報じている。
つまり、暴走時に“てんかん”の発作が起きていなかった可能性についても報道し始め、すでに今日あたりから“事故”ではなく“事件”と名称の変更が行われたようだ。
ということで、現在まだ全容解明が出来ていない事件であるので、今後も慎重に見ていかないといけない問題なのだろう。
なお、オマケとして、“てんかん”の基礎的知識についてもいくつか聞いたので、以下に紹介しておきたい。
∞・∞・∞・∞・∞
【5:“てんかん”は遺伝するのか】
自分:「やっぱり遺伝との相関性は大きい?」
協会:「いえ、遺伝というのは全く無いです。それもまた世間から大きく誤解されているんですが…」
実は親戚に“てんかん”患者がいて、取材では最初にこの話から振ったのであるが、正直、これは親族でありながら誤解していた。
電話口では「そういうのがもう少し分かってもらえれば、今みたいに“てんかん”である事実を隠して生きていかなくても済むのに…」と悔しさをにじませていた。
【6:我々は今後“てんかん”にはならないのか】
自分:「“てんかん”は生まれつきのもので、そうでない人は大丈夫でしょうか?」
協会:「いえいえ、そんなことはないです。生まれつきのものではなく、最近では高齢者になってからの“てんかん”患者も多いので…」
今、“てんかん”ではないから一生大丈夫という話ではなかった。
ある日突然“てんかん”になる可能性もあり、それは明日かもしれないのだ。
∞・∞・∞・∞・∞
結局のところ、我々の多くはまだ“てんかん”を知らないのかもしれない。
自分も実際この取材を実施する直前に「突然意識を失い、痙攣を伴うこともある」という症状の知識を簡単に見ただけに過ぎなかった。
そして知識だけでなく、“考えるスタンス”も考えないといけないと思った。
つまり、あくまで自分は“てんかん”にならないという路線でこの問題を考えるのではなく「そうなった場合のことを考えつつこの問題を考えた方がより責任ある正確な判断が出来る」のかもしれない…ということだ。
すでに「日本人の1%は“てんかん”患者」であり、それは決して少なくない数なのだ。
≪関連記事≫
▼ 社団法人 日本てんかん協会・公式サイト(縮小版)
▼ 日本てんかん協会が法務大臣に「刑法および運転免許制度に関する要望書」を提出